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EU 共通債券の発行を決める(さーちゃん編)

【2020/05/28 日経】欧州連合EU)の欧州委員会は27日、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済の復興計画案を公表した。新たに補助金と融資からなる7500億ユーロ(約89兆円)の基金を創設する。すでに合意した支援策と合わせ、総額は1.85兆ユーロ(約220兆円)規模になる。

EUが5千億ユーロ分の債券を発行して市場からお金を調達し、被害が大きいイタリアなど南欧に回す。補助金となるため、返済の必要はない。

市場から調達した資金をどう返すのかも定まっていない。欧州委によると、債券の償還期間は30年を想定する。償還には加盟国によるEU予算への拠出額を増やすのに加え、デジタル課税や排出量取引制度の対象拡大などEU独自の新規財源を確保する案が出ている。

 

 

さて、EUが共同債という名称こそ使ってませんが、資金を同じ責任で調達します。これは大きな一歩だと思います

 

目次

1.EUの共同調達とは?

2.何ですごいの?

3.どうして今できたの?

 

さーちゃん:0歳児。わからないことがいっぱい。冷静な女の子

はむすけ:私。証券営業マン。さーちゃんのパパ

 

1.EUの共同調達とは?

はむすけ:日経新聞によるとEUがコロナ後の復興計画をまとめたね。資金調達の方法にEUでの共同債券を使う方法が初めて採択されたよ。

さーちゃん:共同債券が初めてなのね。 普段の調達方法は何があるの?

はむすけ:EUの予算は加盟国の人口に応じた拠出金をもとにしているよ。 2010年のデータだけどこんな感じだね。

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さーちゃん:ドイツが一番多いね。次にフランス、イタリア、英国、スペインなのね。

今回の共同債券はどういうもの?

はむすけ:まだ詳細はわからないんだけど、加盟国共同で債務を負って資金を集めるみたいだね。期間は30年だとか。 今までは各国のカンパだったけど、共同債券は連名で借金をするからより共同体としての責任が重くなるね。

 

2.何ですごいの?

はむすけ:ユーロの欠点を埋める役割が期待されるからだよ。

さーちゃん:ユーロの欠点って?

はむすけ:ユーロは「通貨」は共通だけど、「経済」が共通ではなかった事で無理が生まれていたんだよ。 通常、経済が強い国は自国通貨高、弱い国は自国通貨安になると考えられているんだけど、経済力に差があるのに同じ通貨を使うと経済力の強い国と弱い国の差が生まれなくなるのよ。

さーちゃん:差が生まれないとどんな無理ができるの?

はむすけ:変動為替相場制(日本もそう。円安とか円高ってやつ)だと、経済が弱い国は通貨安になって、輸出の競争力が増す。そうしているうちに経済が回復してくる。

逆に、経済が強い国は通貨高になって輸出の競争力が落ちる。そうすると経済の過熱を防ぐ。バランサーの機能が期待できるんだけど、これが作動しなくて経済の弱い国でも通貨高になって回復が遅れたり、経済の強い国でも通貨安で過熱してしまう事態になってしまうんだよ。

さーちゃん:経済のバランスがとりづらくなって不安定になりやすいのね。 でも、例えば日本にはそういう問題はないの? 

はむすけ:そこなんだよね。共通の「通貨」を使って問題がないのは「経済」も共通だからさ。この経済の統合が出来ていないのがEUの欠点なの。

さーちゃん:経済の統合が必要なのね。それで今回の共同債券はどういう意味があるの?

はむすけ:統合の一歩だよ。経済力は違うけど”共同で債務を負う” その資金で経済を立て直す。弱いところを補強して水準を揃えるように資金を使うわけだよ。

さーちゃん:みんなで資金を集めて、経済の弱っている国を補強するのね。そうして平にしていく!

 

3.どうして今できたの?

さーちゃん:でも、大事な要素ならもっと早くしておけば良かったんじゃない?

はむすけ:いい質問だね。それは各国、特に助ける方の経済力のある国の視点にたてばわかってくるんじゃないかな。 

さーちゃん:助ける側ってことは資金を出す側って事よね。 わかった! お金出したくないんだ。他の国の人に自分たちのお金をプレゼントするのって抵抗あるわ。

はむすけ:そうだね! ほかにも助ける方のメリットが減る部分もあるよ。ヒントは通貨と経済の関係だね。

さーちゃん:さっきのやつね。経済の強い国は自分の通貨が高くなりやすい、、、

・・・

そうか! 経済が弱い国があるから、その分通貨が安くなってくれるってわけね。これなら経済力を強く保ちながら通貨を安く出来て、輸出を優位にできるね。

はむすけ:そういう事。そうなると助ける方のデメリットはどうかな?

さーちゃん:①資金を出さないといけない。 ②助けた事によって平になった経済力の差で通貨が安く留まってくれない=輸出の優位が減ってしまう。 これじゃあ助けない方がいいじゃない。

はむすけ:まさにそういうハードルがあったんだよ。他にはあまり勤勉ではないと言われる南欧諸国が経済的に弱いことが多く、勤勉と言われる西欧諸国としては「怠け者をなんで自分たちが助けないといけないのか」といった感情的なこともあるようだね。

さーちゃん:その気持ちわかるわ。優秀な私が、へっぽこはむすけの面倒見るのかと思うとモチベーションが下がるもの

はむすけ:すまぬ;; 

さーちゃん:まぁそれが持つものの務めよね。 でもほんと、なんで共同債券ができるようになったの?

はむすけ:一番の拠出国のドイツが了解したことが大きいね。さーちゃんの言ったデメリットを一番受ける国が受け入れた。それだけデメリットよりも、経済の統合を進める方がメリットがあると考えたんだろうね。

さーちゃん:何か今までと違う流れが生まれているのかしら

はむすけ:そうかもね。最近は米中に注目が集まって、EUの存在感が薄れていたことも無関係ではないと思うよ。加盟国内でギクシャクしてては外とは競っていけないからね。

さーちゃん:まだどんな課題があるの?

はむすけ:これは僕の想像だけど、経済の統合を深化しないといけないと考えると。加盟国間の資金の融通と平準化、交付金の創出。共通の税制も取り入れないといけないんじゃないかな。経済と政治は深く結びついているから政党や議会も合わせる必要が出てくるかもね。

さーちゃん:まだまだ先は長そうね。でも今回みたいに雨降って地固まるを繰り返していくのかな。 お互いにうまく譲り合えるといいね。

 

 

 

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