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米中貿易摩擦 第一段階合意 署名 内容まとめと評価

日経新聞2020/01/16】米中両国は15日、貿易交渉を巡る「第1段階の合意」で正式署名した。合意には中国が対米黒字の縮小に向けて、米国製品の追加購入分として今後2年で2000億ドル(約21兆6千億円)を上積みすることを盛り込んだ。

米中が合意文書に署名するのは、18年7月に関税合戦が勃発して以降で初めて。米国側は2月中旬をメドに、19年9月に発動した制裁関税第4弾(1200億ドル分)の関税率を15%から7.5%に引き下げる。

 

日経新聞2020/01/16】米通商代表部(USTR)は15日、約90ページにわたる「第1段階の合意」文書を公表した。合意した主要7分野の概要は以下の通り。

1.貿易の拡大 中国は経済を開放し、貿易体制を向上するための構造的な変革に着手する。中国は今後2年間で2017年に比べ、米国からのモノやサービスの輸入を2000億ドル(約22兆円)以上増やす。内訳は工業製品が777億ドル、農産品が320億ドル、エネルギーが524億ドル、サービスが379億ドル。

2.知的財産 中国における知的財産の保護と執行を強化する。製品の販売やサービスにおける貿易秘密の流用について直接の当事者を超えて、貿易秘密の保有者はあらゆる個人や法人に対し訴訟を提起できる。電子商取引プラットフォームへの効果的な行動、偽造医薬品や関連製品への効果的な執行措置、国内や輸出される海賊品や偽造品への執行措置の劇的な増加を義務付ける。

3.技術移転 中国が市場アクセスや行政承認または利益の受け取りを条件に、外国企業に技術移転の圧力をかけることを禁じる。

4.農産品 中国は年平均400億ドルの米農産品や海産物を購入、輸入する。今後2年間では少なくとも800億ドルを輸入する。

5.金融サービス 中国は証券サービス、生命、医療、年金の保険サービスにおいて20年4月1日までに米国企業の出資規制を撤廃する。電子決済分野では、米国企業への免許交付プロセスの改善を保証する。

6.マクロ経済政策と為替レート 米中両国は通貨政策における双方の自主性を認める。通貨の競争的な切り下げを控え、競争力のために為替レートを目標にしない。

7.相互評価と紛争解決 今回の合意の実行を協議するため、米中両国は「貿易枠組みグループ」を立ち上げる。

 

さて、米中第一段階の合意内容について私見を述べたいと思います。とても重要な内容ばかりだと思います。

 

1について。

今回のメインです。元々米国の対中輸出は1500億ドル規模です。そこに2年で2000億ドルの輸入拡大を約束させたのですから相当の売り込みに成功しました。

特に私が注目したのはサービスを379億ドル上積みしている点です。最後に述べます。

2について。

いわゆる海賊品や模倣品、またノウハウなどの流用を行った場合提訴できるようにすることで米国製品の保護を行います。

3について。

重要な内容です。なぜならモノやサービスを供給するにあたって消費地の近隣で生産・提供する事は理にかなっています。しかし、この合意がなければ技術を学ばせなければ進出できず。学ばれた後に追い出される恐れがありました。これにより保護が期待できます。

前述の2と合わせて中国で本格的に商売を行う上で自社を守るバリアが国によってもたらされました。米国企業は進出しやすくなります。

4について。

わざわざ農産品で一項目あるというのはそれだけの思いがあるのでしょうが、私には背景がよくわかりません。ごめんなさい。

5について。

金融市場の解放! 証券サービス(資産運用、商品先物など)、保険について出資規制の撤廃です。今までは外資の全額出資は認められておらず、必ず中国企業合弁会社を設立しないといけませんでした。これで自分たちだけで進出することができます。中国は日本の人口ほどの富裕層がいると言われていますので魅力的な市場にアクセスしやすくなりました。特に合弁相手の中国企業からの横やりが入らないなんて!

6について。

中国の為替操作を攻撃する糸口を作りました。米国は為替操作国認定は解除しましたが、今まではお互い白を切ってしまえば良かったですが、これからはそうもいきません。約束しちゃいましたので。

7について。

合意の内容が実行されない可能性を消すために、グループを発足させます。内容が結果的に骨抜きにされては元も子もありませんのでね。ただ、それでも実際は簡単に履行されないと思いますが牽制機能は作りました。

 

最後に。

1と2と3と5を複合的に考えると、中国の金融資産へのアクセスを安全に行う道ができつつあるという事が言えます。サービスの購入を決めさせ、出資制限を撤廃してのびのび営業ができる体制を作り、そのノウハウや技術を中国から守ることで競争力を保つことができます。

 

 以前から申し上げているように米中貿易問題とは、一大消費地になりつつある中国に米国製品、サービスを売りたい米国の思いと、内需を拡大することで投資に頼らない安定した経済基盤を築きたい、また世界から買い手となることで自国の地位向上を図りたい中国の思惑が合致している出来事です。

両国は対立しているような報道が多いですが、その目的は一致していると思いますので過度な心配はやはり無用だと思います。 ほかの人がこの問題で右往左往するのであれば、間違っているのでチャンスと捉えて良さそうです。

 

 ちなみにたくさん条件を飲まされたはずの中国さんもニッコリのようです^^

日経新聞 2020/01/16】中国外務省、「中米両国にプラス」 米中部分合意で

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54473840W0A110C2EA2000/

EUさんは自分たちが蚊帳の外なのをよく思っていないので、粗探しするようです。

日経新聞 2020/01/17】EU、米中合意を精査へ WTO違反なら「対応取る」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54495810X10C20A1000000/

 

 

【2020/1/22 追記】

中国と米国の思惑は一致していると申し上げた根拠は以下の記事にあります。2018年の全人代での李首相の会見です。

李首相記者会見要旨「中国は自由貿易を守る」 

2018/3/20 日経新聞一部抜粋

【貿易・投資】中国は自由貿易を守り続けるし、開放が中国の基本的な国策だ。モノの貿易の関税は世界で中程度の水準だが、全体の関税率をさらに下げる。よく売れている消費品や薬品は大幅に税率を下げ、抗がん剤はゼロにする。

サービス業の外資参入も自由化する。介護、医療、教育、金融は一部で出資比率の制限をなくす。製造業は全面開放するし、技術移転の強制を許さない。知的財産権も守る。外資の投資禁止項目をさらに減らす。外資企業に関わる3つの法律を1つにまとめ、内外無差別の約束を実現する。

 

  ということで、この時点で市場開放や技術移転の強制の防止、知的財産保護について話をしています。今回の合意はこれに沿う内容ですので思惑を一致していると申し上げました。 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28375970Q8A320C1FF2000/

 

f:id:humske:20200118183858j:image

 

米中「管理貿易」ゆがむ世界 22兆円取引、供給国に余波

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54494000W0A110C2MM8000/

米中「第1段階の合意」の概要

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54482150W0A110C2FF1000/