【2022/09/02 ロイター】米労働省が2日発表した8月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は市場予想を若干上回る伸びとなったものの、賃金の伸びが鈍化し、失業率が3.7%に上昇した。労働市場が緩み始めていることが示唆され、米連邦準備理事会(FRB)がリセッション(景気後退)を引き起こすことなく、米経済を鈍化させることができるという「慎重ながらも楽観的」な見方が広がった。
非農業部門雇用者数は前月比31万5000人増加。7月分は52万8000人増から52万6000人増に若干下方修正された。6─7月分では10万7000人分下方修正された。
8月は20カ月連続で雇用が増加。雇用は現在、パンデミック(世界的大流行)前の水準を24万人上回っている。
ロイターがまとめた市場予想は30万人増。予想は7万5000人増から45万人増まで幅があった。
失業率は3.7%で、前月の3.5%から上昇し、半年ぶりの高水準となった。ただ、家計調査によると、78万6000人が労働力として参入しており、失業率の上昇はこれが理由。
労働参加率は62.4%と、7月の62.1%から上昇した。ただ、パンデミック前の水準をなお1%ポイント下回っている。
時間当たり平均賃金は0.3%上昇と、7月(0.5%上昇)から伸びが鈍化した。前年同月比も5.2%上昇にとどまった。
目次
1. 雇用者数と失業率は?
2. 平均時給は?
3. PCEコアデフレータは?
4. ISM景気指数は?
5. まとめ
6. ジャクソンホール講演
さーちゃん:1歳児。わからないことがいっぱい。冷静な女の子
はむすけ:私。証券営業マン。さーちゃんのパパ
1. 雇用者数と失業率は?
はむすけ:さて少し注目度が落ちた雇用統計をまとめるよ。
さーちゃん:なんで注目度が落ちたって言えるの?
はむすけ:ジャクソンホール講演でパウエル議長が「短期間の経済指標に左右されない」と表明したからだよ。さらに中心はインフレ率に移っているのもあるね。
さーちゃん:でもチェックは怠らないようにしないとね。
はむすけ:そういう事。 雇用者数は31.5万人増だったよ。
さーちゃん:市場予想は30万人なら予想と大差ないわね。
はむすけ:失業率は0.2%悪化の3.7%。
さーちゃん:ついに悪化してしまったわね。心配ないの?
はむすけ:労働参加者の増加が原因のようだね。まだまだ低水準だし問題はないだろう。
さーちゃん:いい感じのスピードダウンになるね。
はむすけ:U-6は7.0%とこちらも前月から0.3%に悪化だね。
さーちゃん:このまま上手くいくんじゃない?
2. 平均時給は?
はむすけ:平均時給は前年比+5.2%だったよ。
さーちゃん:前月の結果と同じね。
はむすけ:給料の伸び>コアインフレ率になっているね。
さーちゃん:給料の伸びがもっと減らないといけないかしら。
3. PCEコアデフレータは?
はむすけ:2022年7月のPCEコアデフレータは+4.6%。
さーちゃん:前回より下がったわね。
はむすけ:これで6月に上昇した以外は直近ピークの2月の5.4%から下がってきているね。
さーちゃん:でもこのペースで毎月0.2%ずつ下がったとしても2%台までも8か月かかるわよ。
はむすけ:急落するような異常値がなければ順調とみていいでしょ。
(追記 2022/09/15)
はむすけ:8月のCPIは総合が+8.3%
さーちゃん:前月の+8.5%から少し鈍化したわね。
はむすけ:コアCPIは+6.3%
さーちゃん:こちらは前月の+5.9%から上昇。市場予想も上回ったわ。
はむすけ:それを受けてNYダウは1276$(3.9%)下落した。
さーちゃん:CPIはそこまで影響ないんじゃなかったの?!
はむすけ:事前に上がっていたから短期トレードの巻き戻しもあったんじゃないかな。それにしても反応大きくて驚いたよ
さーちゃん:これで金融引き締め加速が意識されたわね。
はむすけ:9月FOMCの経済見通しはどうなるかな。
4. ISM景気指数は?
はむすけ:ISM製造業景気指数は52.8と前月比変わらず。
さーちゃん:製造業は50は上回っているね。急落は見られないね。
(追記 2022/09/06)
はむすけ:ISM非製造景気指数は56.9と前月を0.2上回った。
さーちゃん:サービス業は先行き強くなったのね。
はむすけ:「生産に相当する業況と新規受注の指数は共に年初来高水準に上昇」と需要が旺盛だね。
さーちゃん:となると、モノからコトへの消費移動が続いているのね。
はむすけ:アメリカのお金を使いたい熱は冷めてないね。
5. まとめ
はむすけ:雇用は強いね。市場予想も上回っているし、雇用者数自体も31.5万人と多い。
さーちゃん:労働市場に帰ってきた人もいそうね。少し前にはFIREや中高年が復帰しないと言われていたけど。
はむすけ:中高年の失業率の推移を探してみたけど見つけられなかったね。参考に、65歳以上の失業率 去年8月と今年の対比 4.2%→2.8%
さーちゃん:これだけ見るとめちゃくちゃ働きだしてるわね。
はむすけ:雇用も物価も少しだけ悪化をしめしてきたね。まだトレンドが変わったかは判断できないけど。
さーちゃん:このまま緩やかな減速になって、ソフトランディング出来たらいいわね。
はむすけ:それが願いだけど、世の中は大抵痛い方に動くから、油断はできないね。
さーちゃん:この後の利上げはどうなるかしら?
はむすけ:9月FOMCの経済見通しに注目だね。金利はより高く、長く引き上げ状態が続くと思うよ。
6. ジャクソンホール講演
【2022/08/26 ロイター】パウエル議長は米ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演し、「インフレを低下させるために、トレンドを下回る成長が一定期間持続する必要がある公算が大きい。労働市況も軟化する可能性が非常に高い。金利上昇や成長鈍化、労働市場の軟化はインフレを低下させるが、家計や企業に痛みをもたらすだろう」と述べた。
ターミナルレート(利上げの最終地点)への言及は避け、金利は必要に応じ上昇するという認識を示すにとどめた。その上で「目標を達成するまで続けなければならない」とし、歴史は時期尚早な政策緩和に警鐘を鳴らしていると指摘した。
最近の米インフレ指標が鈍化していることについては、「単月の改善はインフレが低下していると確信するにはほど遠い」とし、他の指標は労働市場における「堅調な基調的な勢い」を示しているほか、求人数が失業者数をはるかに上回っており、雇用市場の「バランスは明らかに崩れている」という認識を示した。
はむすけ:前から指摘していることを改めて周知した印象だね。
さーちゃん:その割に株価は1000ドルも急落したわよ。
はむすけ:8月月初から見ると8月相場は”行ってこい”になっているから短期筋の巻き戻しのきっかけになったんじゃないかな。
さーちゃん:出来高は8/26は急増したよ。
はむすけ:そうだね。でも8月は低調な出来高だったよ。
さーちゃん:パウエル議長の講演からはインフレ抑制を第一に考えているという強力なメッセージがあったわね。
はむすけ:そうだね。経済や家計、企業、雇用は2の次ってことだから警戒したほうがいいよ。
さーちゃん:株価は特に下がっても気にしないみたいね。
はむすけ:ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は株価下落をうれしく思うと発言しているしね。
さーちゃん:株式には当面向かい風が続きそうね。
はむすけ:そうだね。パパはソフトランディングの失敗も視野に入れておいたほうがいいと思うよ。
さーちゃん:強力なリセットが働くのかしら、それとも上手く乗り切るのか。どうなるかしらね。
米8月雇用31.5万人増も失業率3.7%に上昇、労働市場の緩み示唆 | ロイター
Table A-15. Alternative measures of labor underutilization - 2022 M07 Results
インフレ抑制まで金融引き締め必要、「痛み」伴っても=米FRB議長 | ロイター
ジャクソンホール後の市場の反応に「満足」-ミネアポリス連銀総裁 - Bloomberg
Speech by Chair Powell on monetary policy and price stability - Federal Reserve Board
米CPI、8月は予想上回る伸び-大幅利上げの可能性強まる - Bloomberg
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